2016年2月17日水曜日

線形代数II演習(第14回)

[場所1E103(水曜日4限)]


HPに行く.

今日は発表でした。
自分の好きな問題を解いていたわけですが、理解している部分もありますが、
まだまだな部分が多かったような気がします.

この秋学期の線形代数の授業の総括は、15回の方のブログに書くことにします.

14回に載せた話題について、ここでは書くことにします.

行列乗についての話を載せましたと思います.
射影子の話はスペースの都合上ここでは割愛します.

$A$ を $n\times n$ 正方行列とすると、$e^A$を
$$e^A=E+A+\frac{1}{2!}A^2+\frac{1}{3!}A^3+\cdots$$
とします.このとき、この級数は収束します.

$||A||=\max\{|a_{ij}||1\le i,j\le n\}$ とします.

このとき、$||A^2||\le n||A||^2$ となります.よって、帰納的に
$||A^m||\le n^{m-1}||A||^m$ となります.

よって、
$$||e^A||\le 1+||A||+\frac{n||A||^2}{2!}+\frac{n^2||A||^3}{3!}+\cdots$$
$$= 1+||A||+\frac{(n||A||)^2}{2!}+\frac{(n||A||)^3}{3!}+\cdots=e^{n||A||}$$
となり、$e^A$ の各成分は収束します.

ここでは、正方行列 $A$ に対して、$e^{tA}$ なる関数を考えます.


例えば、$A=\begin{pmatrix}\lambda&0\\0&\mu\end{pmatrix}$ なる対角行列とすると、
$A^n=\begin{pmatrix}\lambda^n&0\\0&\mu^n\end{pmatrix}$ となるので
$e^A=\begin{pmatrix}e^\lambda&0\\0&e^\mu\end{pmatrix}$
となります.よって、$e^{tA}=\begin{pmatrix}e^{\lambda t}&0\\0&e^{\mu t}\end{pmatrix}$

また、$A=\begin{pmatrix}\lambda&1\\0&\lambda\end{pmatrix}$ とすると、
$A^n=\begin{pmatrix}\lambda^n&n\lambda^{n-1}\\0&\lambda\end{pmatrix}$ ですので、
$e^A=\begin{pmatrix}e^\lambda&e^\lambda\\0&e^\lambda\end{pmatrix}$
$e^{tA}=\begin{pmatrix}e^{\lambda t}&te^{\lambda t}\\0&e^{\lambda t}\end{pmatrix}$
となります.

対角化可能なものについては、$P^{-1}AP$ を対角行列 $D$ としたときに、
$e^{P^{-1}AP}=P^{-1}e^AP=e^D$ とし、
$e^A=Pe^DP^{-1}$ とすることで $e^A$ を計算します.

対角化可能でない場合は、$2\times 2$ 行列の場合は、$P^{-1}AP$ により上の2つ目の行列と形になります.サイズが3以上の場合も同じようにやればよいのですが、少し面倒なのでここでは省略します.

ここでは、行列乗が計算できたとして、話を進めます.


$e^{tA}$ の微分

ここで、$e^{tA}$ を微分します.行列の微分とは、各成分の微分を意味します.
そうすると、

$$\frac{d}{dt}e^{tA}=\frac{d}{dt}\left(E+tA+\frac{t^2}{2!}A^2+\frac{t^3}{3!}A^3+\cdots\right)$$
$$=\left(A+\frac{t}{1!}A^2+\frac{t^2}{2!}A^3+\cdots\right)$$
$$=A\left(E+tA+\frac{t^2}{2!}A^2+\cdots\right)=Ae^{tA}$$
となります.

この $e$ の行列乗を用いて、線形常微分方程式を解くことができます.
ここで、$e^{tA}$ は $A$ と可換であることに注意しておきます.

線形常微分方程式

微分方程式とは、微分演算が入った関数のある等式のことです.常微分方程式とは、一変数関数がもつ微分方程式のことです.その中でも線形ということは、
$$x^{(n)}(t)+a_1x^{(n-1)}(t)+\cdots+a_{n-1}x'(t)+a_nx(t)=0$$
となる方程式のことです.ここでの方程式とは、関数 $x(t)$ が変数としての役割であり、常微分方程式を解くということは、上記のような微分を用いた式を見たす関数 $x(t)$ を求めるということを意味します.

また、線形であるということは、解全体がベクトル空間をなすということです.
実際、$x(t),y(t)$ が上の方程式を満たすとすると、微分演算子の線形性
$$\frac{d^m(x(t)+y(t))}{dt^m}=\frac{d^mx(t)}{dt^m}+\frac{d^my(t)}{dt^m}$$
から、$x(t)+y(t)$ もその方程式を満たすことがわかると思います.

ベクトル空間であるためには、スカラー倍も定義されていないといけません.
$\lambda\in {\mathbb R}$ と解 $x(t)$ に対して $\lambda$ 倍された関数 $\lambda x(t)$ は再び、解になっていることがすぐにわかると思います.
よって解の空間はベクトル空間となるのです.

また、ここで、係数 $a_i$ は全て実数としておきます.一般の関数とすることもできますが、そのときは、微分方程式を解くのは少し難しくなります.そのとき方は解析の授業の方で習ってください.
ここでは、定数係数の線形常微分方程式のみ扱います.

今、
${\bf x}(t)={}^t(x(t),x'(t),\cdots,x^{(n-1)}(t))$ 置きます.そうすると
$${\bf x}'(t)=\begin{pmatrix}0&1&0&\cdots&0\\0&\ddots&1&0\cdots&0\\\cdots&\cdots&\ddots&\ddots&0\\0&\cdots&\cdots&0&1\\-a_n&-a_{n-1}&\cdots&\cdots&-a_1\end{pmatrix}{\bf x}(t)$$
と連立一階常微分方程式に帰着されます.
ここで、この $n\times n$ 行列を $A$ とおきます.

そのとき、$e^{-tA}$ と $A$ は可換なので、 $(e^{-tA}x(t))'=-e^{-tA}Ax(t)+e^{-tA}x'(t)=e^{-tA}(-Ax(t)+x'(t))=0$ となります.
よってこのベクトルは定数ベクトルとなり、それを $(c_1,\cdots,c_n)$ と置くと、
$$x(t)=e^{tA}\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_n\end{pmatrix}$$
となります.よって、$\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_n\end{pmatrix}$ は $x(t)$ の初期ベクトルということになります.

これで、$x(t)$ が解けたことになります.あとは、$e^{tA}$ の計算が残されています.
この計算例については、去年のページに幾つか載せたのでそちらを参照して下さい.

去年のページ


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