2016年10月27日木曜日

微積分II演習(化学類)(第3回)

[場所1E102(水曜日4限)]

今日は、
  • 接平面の方程式の計算方法
  • 合成関数の微分法I
  • 合成関数の微分法II
をやりました.少し計算が多かったと思います.

内容を通して、偏微分の内容は仮定して話をしました.
むしろ、偏微分の計算の仕方を練習しながら接平面や合成関数の微分法を
学んだと言っても良いかもしれません.
もし、偏微分に関して不十分でしたら、教科書などで復習しておいてください.

上にpdfとしてアップした配付プリントは、授業中配ったもので以下の点で訂正してあります.

・解説の方のプリントで3-2の微分の計算例.
・例題3-1.(2)の問題の言い方を訂正.
・例題3-2.(2)を少し授業中に補足した言い方に変えました.


接平面の方程式の計算方法

接平面とは、2変数関数 $z=f(x,y)$ のグラフのある点 $(x,y,f(x,y))$ に接する平面のことで、
点 $(x,y,z)=(a,b,f(a,b))$ での接平面の方程式は、

$$z=f_x(a,b)(x-a)+f_y(a,b)(y-b)+f(a,b)$$
と書き表せます.

1変数関数の場合を思い起こせば、1変数関数 $y=f(x)$ の $(x,y)=(a,f(a))$ での接線の方程式は
$$y=f'(a)(x-a)+f(a)$$
であったと思います.上の式はこの式の2次元バージョンと思えるでしょう.


いくつか、例をやりましたが、もう一度ここでも復習しておきます.

例1

$f(x,y)=xy$ のときの $(x,y)=(a,b)$ での接平面の方程式は、
$f_x(x,y)=y, f_y(x,y)=x$ であり、$(a,b)$ を代入すると、$f_x(a,b)=b,f_y(a,b)=a$ となり、
公式に当てはめれば、

$$z=b(x-a)+a(y-b)+ab=bx+ay-ab$$
となります.この式が接平面の方程式です.

注意して欲しいのは、接平面の方程式は、変数 $x,y$ の1次式であるということです.
たまに、$f_x,f_y$ を計算するのはいいが、$(a,b)$を代入するのを忘れて、
接平面なのに、$x,y$ の2次関数や、はたまた一般の関数になってしまう人がいます.

できた式は必ず $x,y$ などの1次関数になっているかどうか確認してください。

例題3-1.(1)

$z=be^{ab}(x-a)+ae^{ab}(y-b)+e^{ab}=be^{ab}x+ae^{ab}y+e^{ab}(1-2ab)$
$z=2a(x-a)+4b(x-b)+a^2+2b^2=2ax+4by-a^2-2b^2$

となります.

合成関数の微分法I

2変数関数の大事な公式である、合成関数の微分法の計算練習をしました.

関数 $f(x,y)$ と $x=x(t)$, $y=y(t)$ を合成した関数 $F(t)=f(x(t),y(t))$ を$t$-微分します.
そのとき、以下の公式成り立ちます.

$$F’(t)=f_x(x(t),y(t))x’(t)+f_y(x(t),y(t))y’(t)$$

$f_x(x(t),y(t))$ は $f(x,y)$ を $x$ において偏微分してから、
$(x(t),y(t))$ を代入したものです.$f_x(x(t),y(t))$ も同じです.


$f(x,y)=5x+3y$, $x=t^2$, $y=t^3$ とすると、$f_x(x,y)=5$, $f_y(x,y)=3$ です.
この場合は、 $(t^2,t^3)$ 代入しても、同じ $f_x(t^2,t^3)=5$, $f_y(t^2,t^3)=3$ です.
また、$x’=2t, y’=3t^2$ なので、公式に当てはめて、

$F'(t)=5\cdot 2t+3\cdot 3t^2=10t+9t^2$ となります.

また、例題の答えは以下のようになります.

例題3-1.(2)

(a) $2\cdot f_x(2t+1,t^2)+2t\cdot f_y(2t+1,t^2)$
(b) $\cos t\cdot f_x(\sin t,\cos t)-\sin t f_y(\sin t,\cos t)$

となります.

例題3-2.(1) 
$f(x,y)$ を実際に当てはめて計算すれば、

(a) $f_x(x,y)=2x+y, f_y(x,y)=x+2y$ より、代入して、
$f_x(2t+1,t^2)=2(2t+1)+t^2=t^2+4t+2$
$f_y(2t+1,t^2)=2t+1+2(t^2)=2t^2+2t+1$ から、
$2\cdot f_x(2t+1,t^2)+2t\cdot f_y(2t+1,t^2)=2(t^2+4t+1)+2t(2t^2+2t+1)=4t^3+6t^2+10t+4$

となります.

(b) の方も同様です.

合成関数の微分法II
次の合成関数は、
$f(x,y)$ に対して、$x=x(s,t), y=y(s,t)$ を代入します.
まとめの方のプリントでは、$x=\varphi(s,t), y=\psi(s,t)$ と書いていますが、
記号 $\varphi,\psi$ が新たに増えると、ややこしいので、ここでは、
$x,y$ のままの公式にしておきます.

このとき、$F(s,t)=f(x(s,t),y(s,t))$ のように新しく、$s,t$ の2変数の関数が得られ、
$s,t$ の偏微分を計算することができるようになります.そのときの
偏微分係数を求めます.
公式は、

$$F_s(s,t)=f_x(x(s,t),y(s,t))x_s(s,t)+f_y(x(s,t),y(s,t))y_s(s,t)$$
$$F_t(s,t)=f_x(x(s,t),y(s,t))x_t(s,t)+f_y(x(s,t),y(s,t))y_t(s,t)$$

となりますが、授業中でも少し説明したように、この微分法は、上の
合成関数の微分法I を2回適用したものに他なりません.

偏微分は、着目する変数以外は全て定数と思うので、例えば、
$F_s(s,t)$ を行うときは、$s$ 以外の変数 $t$ は定数だと思います.
ですので、例えば、$t=t_0$ とかおけば、

$F(s,t_0)=f(x(s,t_0),y(s,t_0)$
という $s$ の1変数関数が得られ、その関数を、$s$ で微分することになるので、
これは、上の合成関数の微分法I が使えるというわけです.

よって、上記のような合成関数の微分法IIが得られるということになります.

また、上の $F_s(s,t), F_t(s,t)$ の公式をまとめて、行列の形に書くことができます.

このとき、

$$\begin{pmatrix}F_s\\F_t\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}x_s(s,t)&y_s(s,t)\\x_t(s,t)&y_t(s,t)\end{pmatrix}\begin{pmatrix}f_x(x(s,t),y(s,t))\\f_y(x(s,t),y(s,t))\end{pmatrix}$$

プリントのまとめに書いてある公式はこの公式の転置に対応するものが書いてあるので注意してください.


例題3-2.(2)について

$F_s(s,t)=f_x(\cos (s+t),\sin(s-t))(-\cos(s+t))+f_y(\cos(s+t),\sin(s-t))\cos(s-t)$
$F_t(s,t)=f_x(\cos (s+t),\sin(s-t))(-\cos(s+t))+f_y(\cos(s+t),\sin(s-t))(-\cos(s-t))$

となります.また、$f(x,y)=xy$ とすると、$f_x(x,y)=y, f_y(x,y)=x$ とすると、
$f_x(\cos (s+t),\sin(s-t))=\sin(s-t)$
$f_y(\cos (s+t),\sin(s-t))=\cos(s+t)$

$F_s(s,t)=-\sin(s-t)\cos(s+t)+\cos(s+t)\cos(s-t)=\cos(2s)$
$F_t(s,t)=-\sin(s-t)\cos(s+t)-\cos(s+t)\cos(s-t)=-\cos (2t)$

となります.

2016年10月25日火曜日

トポロジー入門演習(第2回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今日は、下限についての不等式を使った証明で困った人が多かったようです。
また、集合の扱いにまだ慣れていないのか、適当な証明で終わらせようと
している人がいました.

$\inf$の使い方

$\inf\{x\in {\mathbb R}|x\in X\}$ を復習してみます.
$\inf\{x\in {\mathbb R}|x\in X\}$ は、$X$ の下界の最大値として定義されます.
もし下界が存在しない場合は、$\inf\{x\in{\mathbb R}|x\in X|\}=-\infty$ となります.

つまり、下界が存在する場合、$\inf\{x\in {\mathbb R}|x\in X\}$ は、$\max\{b\in {\mathbb R}|b\le x, \forall x\in X\}$
として定義されます.

今日やってくれた人の解答に沿ってやってみます.

問題は、
不等式 $|d(x,A)-d(y,A)|\le d(x,y)$ を成り立つことを示す

ということです.
$d(x,A)-d(y,A)\le d(x,y)$ を示す必要があります.

まず、三角不等式から、$a\in A$ に対して、
$$d(x,a)\le d(x,y)+d(y,a)$$
が成り立つ.$a$ を $A$ において $\inf$ をとると、$\inf\{d(x,a)|a\in A\}\le d(x,y)+d(y,a)$ が成り立つ.

よって、左辺は、$d(x,A)$ であるから、
$d(x,A)\le d(x,y)+d(y,a)$ となり、
$$d(x,A)-d(x,y)\le d(y,a)\ \ \ \ (\ast)$$
 が成り立つ.

ここで、任意の $a\in A$ に対して、上の不等式($\ast$)が成り立つことに注意しましょう.
そうすると、$d(x,A)-d(x,y)$ は $\{d(y,a)\in {\mathbb R}|a\in A\}\subset {\mathbb R}$ の下界であることがわかります.
上に書いたように、下界の最大が $\{d(y,a)\in {\mathbb R}|a\in A\}\subset {\mathbb R}$ の $\inf$ なので、

$d(x,A)-d(x,y)\le \inf\{d(y,a)\in {\mathbb R}|a\in A\}$ となり、
$d(x,A)-d(x,y)\le d(y,A)$ が成り立ちます.

よって、$d(x,A)-d(y,A)\le d(x,y)$ となり、$x,y$ の役割を入れ替えて、
$d(y,A)-d(x,A)\le d(y,x)=d(x,y)$ となり、
問題の不等式が成り立つことがわかります.



また、別の問題で、
$d(x,A)=0$ であることと、$x$ が $A$ の集積点であることが同値であること


の証明ですが、
$d(x,A)=0$ であることから、$d(x,a)=0$ となる $a\in A$ としている人もいましたが、
そうではありません. $d(x,A)$ は $\inf$ で定義されていることを思い出してください.

定義は、$d(x,A)=\inf\{d(x,a)\in{\mathbb R}|a\in A\}$
です.これは、$A$ の点列で $x$ との距離が $d(x,A)$ に収束するような、
ものが存在するということです.
$A=\{1/n|n\in{\mathbb N}\}$ であれば、$d(0,A)$ は $0$ ですが、$A$ には、$0$ からの距離が $0$ の点、つまり、$0$ 自身は含まれません.

実際証明をしてみると、$d(0,1/n)$ は $0$ に収束するので、$d(0,A)$ は $0$ 以下であることがわかります.
$d$ は距離関数なので、$d(0,A)\ge 0$ であるので、$d(0,A)=0$ であることがわかります.


元の問題に戻ると、
$d(x,A)=0$ であるとすると、$x$ との距離が いくらでも $0$ にちかいような $A$ の点列が取れます.
つまり、任意の $\epsilon>0$ に対して、$d(x,a)<\epsilon$ となる $a\in A$ が存在します.
これは、$x$ が $A$ の集積点であることを意味しますね.

逆も同じように示してください.



集合のイコール

また、
$\cap_{n\in{\mathbb N}}(-\frac{1}{n},1+\frac{1}{n})=[0,1]$ であることを示す.
という話もありました.
開集合の共通部分を使って、閉集合を表わせという問題でした.

このとき、$-\frac{1}{n}\to 0$ であるから、とか $1+\frac{1}{n}\to 1$ となる議論から
上記のイコールがなりたつなどの直接的な議論はよくありません.
集合の単なる無限共通集合ですからそのような直感はここでは役立ちません.

ちなみに、証明は他人を説得させる手法ではないことを覚えておいてください.

では、何なのか?どのようなことを示せばよいのか?
示すべきことは大概決められています.

これこれはある性質を満たすか?という問題であれば、
その性質が定義されており、その定義どおりかどうかを問うているのです.
例えば、連続なら、連続の定義に当てはまるのかどうか?
つまり、定義に戻って議論できるかどうか?ということです.


採点をしている人たちは、決められたもの(定義)に沿って決められたとおりに示しているか?
を見ているだけなのです.レポートを採点しているときなどもそうです.

なんとなくのイメージをするのは、証明するもののゴールを考えるときと、
証明の方針を決めるときくらいです.

実際の証明は道筋立てて論理的に書かなければなりません.


この場合では、極限のイメージはあって、イコールは正しそうだな、では証明を付けてみよう、
ということになります.

証明は、集合のイコールなので、イコールの意味に立ち返れば、

$\cap_{n\in{\mathbb N}}(-\frac{1}{n},1+\frac{1}{n})\subset [0,1]$
$\cap_{n\in{\mathbb N}}(-\frac{1}{n},1+\frac{1}{n})\supset [0,1]$
の両方示せばよく、この包含関係は、

$a\in \cap_{n\in{\mathbb N}}(-\frac{1}{n},1+\frac{1}{n})$ ならば、$a\in [0,1]$

$a\in [0,1]$ ならば、$a\in \cap_{n\in{\mathbb N}}(-\frac{1}{n},1+\frac{1}{n})$

を証明することに対応します.


この演習を見ていていつものように、トポロジー入門演習の証明を書くことにこれまで以上に
ギャップを感じ始めるのは、第3回くらいです.
自分の証明がいかに証明になっていないか分かると思います.

来週からもわかっていなさそうなところはどんどん指摘していきます!!


火曜日は、手習い塾に行くので、もし解きたい問題で解けない問題
やわからないところがありましたら、ご相談ください。

2016年10月12日水曜日

微積分II演習(化学類)(第2回)

[場所1E102(水曜日4限)]


今日は、
  • 2変数関数の連続性
  • ランダウの記号

についてやりました。

2変数関数の連続性

関数が連続であることは、極限値が一致すること、

$$\lim_{(x,y)\to (a,b)}f(x,y)=f(a,b)$$
であることが必要十分ですが、今日やったことは、左辺が存在することを示す方法です.

$\lim_{(x,y)\to (a,b)}f(x,y)$ が存在する、つまり、 $(x,y)\to (a,b)$ のときに、
$f(x,y)$ が収束するということは、$(x,y)$ から、$(a,b)$ に近づくあらゆる道
に関して、$f(x,y)$ が収束するということになります.


収束性の証明方法の例として、授業でやった同じ(例1)をもう一度書いておきます.

$(x,y)$ を$(x,y)=(a+r\cos\theta,b+r\sin\theta)$ のように極座標表示を
すると、ある点 $(x,y)=(a,b)$ に収束するすべての道は、
$r\to0$ が成り立ちます.
このようにして、$(x,y)$ が $(a,b)$ に近づくとき、
$0$ に収束するような $r$ に関する極限の問題にすり替えられるのです.


(例1)[収束することの証明]

(証明)
$f(x,y)=\frac{xy(|x|+|y|)}{x^2+y^2}$ とする.$x=r\cos \theta, y=r\sin \theta$ とする.
このとき、
$|f(x,y)|\le\frac{|r^2\cos\theta\sin\theta|(r|\cos\theta|+r|\sin\theta|)}{r^2}=r|\cos\theta\sin\theta|(|\cos\theta|+|\sin\theta|)\le 2r$

となる.よって、$2r\to 0$ なので、挟み撃ちの原理から、
$(x,y)\to (0,0)$ のとき、$\frac{xy(|x|+|y|)}{x^2+y^2}\to 0$ となる.
よって、$\frac{xy(|x|+|y|)}{x^2+y^2}$ は原点で極限値 $\lim_{(x,y)\to (0,0)}\frac{xy(|x|+|y|)}{x^2+y^2}=0$ をもつ.(証明終了)

最初の不等式は、三角不等式を用い、最後の不等式は、$|\cos\theta|\le 1$ や $|\sin \theta|\le 1$ を使っています.

全ての道に対してある一定の値に収束することを示すことで、関数
が極限値を持つことが示されました.

一方、収束しないことを示すには、このことを否定すればよく、
ある道を取ると収束しないことを示すか、収束先が一致しないことを示せば良いわけです.

下の例では、収束先が一致しないような道が取れることを示します.


(例2)[収束しないことの証明]

(証明)
$f(x,y)=\frac{xy}{x^2+y^2}$ とする.
$(x,y)=(t,0)$ なる道をとると、
$f(t,0)=0$ であり、
$(x,y)=(t,t)$ なる道をとると、
$f(t,t)=\frac{t^2}{t^2+t^2}=\frac{1}{2}$ となる.
よって、原点 $(0,0)$ に収束する2つの異なる道に対して収束先が一致しないので、
この関数は $(0,0)$ で極限値をもたない.(証明終了)


例題2-1

授業でもやったように、収束を示しなさい、もしくは、
収束しないことを示しなさいという問題ではなく、
近づき方(角度 $\theta$ )によってどのような値に近づくかということです.
要は、$f(r\cos\theta,r\sin\theta)$ の値を計算しなさいという問題です.


例題2-2

(1-b) について.

授業の途中で
$$\frac{x^5+y^6}{x^2+y^4}$$
の原点での収束性について、うやむやになってしまったのでここで書いておきます.

(証明)
$x=r\cos\theta$, $y=r\sin\theta$ とする.
$x^2+y^4=r^4\sin^4\theta+r^2\cos^2\theta=r^4\sin^4\theta+r^2(1-\sin^2\theta)$ 
ここで、$\sin^2\theta=t$ とする.
$x^2+y^4=r^4t^2-r^2t+r^2=r^4(t-\frac{1}{2r^2})^2-\frac{1}{4}+r^2\ \ \ \ \ (\ast)$

ここで、$r$ を $0$ に収束するとき.$r$ を十分 $0$ に近い正の数とする.
特に、$\frac{1}{2r^2}>1$ が成り立つとする.

$0\le t\le 1$ であることに注意すると、このとき、$(\ast)$ は、$t=1$ のとき最小であるので、
このとき、

$x^2+y^4\ge r^4$ となる.また、
$|x^6+y^5|\le r^5|r\cos^6\theta+\sin^5\theta|\le r^5(r+1)$ となる. 
よって、これらの不等式を合わせることで、

$\Big|\frac{x^6+y^5}{x^2+y^4}\Big|\le \frac{r^5(r+1)}{r^4}=r(r+1)\to 0$ ($r\to 0$)

がいえ、よって、$f(x,y)\to 0$ がいえる.(証明終了)


(別解)

授業中回ったときに解いていた学生の答えはこうでした.黒板にも書きました.

(証明)
$$\Big|\frac{x^6+y^5}{x^2+y^4}\Big|\le \frac{x^2}{x^2+y^4}|x^4|+\frac{y^4}{x^2+y^4}|y^2|\le |x^4|+|y^2|\ \ \ \ (\ast\ast)$$
このときに、同じように $(x,y)$ の極座標表示をしても良いですが、
$(x,y)\to (0,0)$ の時、それぞれ、$x\to 0$, $y\to 0$ となるとき、
$x\to 0$ かつ $y\to 0$ となるので、

この $(\ast\ast)$ は $0$ に収束する.(証明終了)


(2-a) についてやっておきます.

$\frac{xy\sin(x^2y)}{(x^2+y^2)^2}=\frac{x^3y^2}{(x^2+y^2)^2}\frac{\sin(x^2y)}{x^2y}$
この時、積の2つめは1に収束しますので、$\frac{x^3y^2}{(x^2+y^2)^2}$ を $0$ に収束することを
示す.この最後の収束性は、上と同じなのでここでは省略します.


(2-b) について.
$\frac{\log\cos(xy)}{x^2+y^2}$ についても、上のようにすれば良いですが、

その前に、一変数の極限について考察が要ります.

$\frac{\log\cos(x)}{x^2}=-\frac{1}{2}$ ということを証明してください.

その後は、上の(2-a)と同じようにして、
$\frac{\log\cos(xy)}{x^2+y^2}\to 0$ が証明できると思います.


ランダウの記号

定義
ある関数 $f(x,y),h(x,y)$ が $\lim_{(x,y)\to (a,b)}f(x,y)/h(x,y)=0$ となるとき、
$$f(x,y)=o(h(x,y))\ \  (x,y)\to (a,b)$$
とかく.


これを用いて、問題2-2を考えて下さい.また、わからないという人がいましたら、下に
何か書くかもしれません.

また、ランダウの記号については、こちらに今から丁度2年前くらいに記事を書きました.

2016年10月5日水曜日

微積分II演習(化学類)(第1回)

[場所1E102(水曜日4限)]

今日から微積分II演習(化学類対象)が始まりました.
ガイダンスと、
  • 春学期の復習(マクローリン展開、積分)
  • 開集合、境界点

について演習を行いました。

春学期の復習

春学期で重要なところを本当にざざっとおさらいをしました.

テイラー展開(マクローリン展開)

テイラー展開とは、関数をある点 $x=a$ の近くで、多項式で近似する方法をいうのでした.
$a=0$ でのテイラー展開をマクローリン展開といいます.

公式は、
$$f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\frac{f'''(a)}{3!}(x-a)^3+\cdots$$
$$=\sum_{n=0}^\infty\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n$$
となります.ここで、$f^{(n)}(a)$ は、関数 $f(x)$ の $n$ 回微分に $a$ を代入したものを表します.

この方法で展開すると、マクローリン展開の公式として、

$$e^x=\sum_{n=0}^\infty \frac{x^n}{n!}$$
$$\sin x=\sum_{n=0}^\infty(-1)^n\frac{x^{2n+1}}{(2n+1)!}$$
$$\cos x=\sum_{n=0}^\infty(-1)^n\frac{x^{2n}}{(2n)!}$$
などが成り立ちます.今回の宿題でも使うのは、
$$(1+x)^a=\sum_{n=0}^\infty \binom{a}{n}x^n$$
です.ちなみに、この係数 $\binom{a}{n}$ は2項係数で、
$$\binom{a}{n}=\frac{a(a-1)\cdots(a-n+1)}{n!}$$
と定義されます.

今回の例題でもあった $a=\frac{1}{2}$ の場合は、
$$\binom{\frac{1}{2}}{n}=\frac{\frac{1}{2}(-\frac{1}{2})\cdots(\frac{1}{2}-n+1)}{n!}=(-1)^{n-1}\frac{1\cdot 1\cdot 3\cdot 5\cdots (2n-3)}{2^nn!}=(-1)^{n-1}\frac{(2n-3)!!}{(2n)!!}$$
この式を用いて、問題1-1(1)のテイラー展開を行ってください.

積分

今日行った積分は、
  • 有理関数
  • 置換積分
  • $\sin^nx$ の積分(部分積分)
でした.

有理関数の積分は、必ず、部分分数展開により、$\frac{1}{(x-a)^n}$ の形か、$\frac{1}{1+x^2}$ の形に直してから、積分しましょう.後者は、
$$\int_0^a\frac{1}{1+x^2}dx=\text{Arctan}(a)$$
と計算できます.

置換積分は、$\int_a^b f(g(x))g'(x)dx$ の形の積分で、
$$\int_a^b f(g(x))g'(x)dx=[F(g(x))]_a^b$$
と計算されます.ここで、$F(x)$ は $f(x)$ の原始関数です.
例題では、$f(x)=\frac{1}{1+x}$ であり、$g(x)=\sin x$ なる関数である場合の計算でした..
置換積分により、
$\int_0^1\frac{\cos x}{1+\sin x}dx=[\log(1+\sin x)]_0^1$ となり、計算の結果 $\log 2$ となります.

最後は、 $\sin^nx$ の計算ですが、これはやり方を忘れてしまった人もいたようですが、漸化式を用いる方法が一般的です.一般に、$I_n=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^nxdx$ とすると、
$$I_n=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^{n-1}x\sin xdx$$
$$=[-\sin^{n-1}x\cos x]_0^{\frac{\pi}{2}}+\int_0^{\frac{\pi}{2}}(n-1)\sin^{n-2}x\cos^2xdx$$
$$=(n-1)I_{n-2}-(n-1)I_{n}$$
となり、$I_n=\frac{n-1}{n}I_{n-2}$ となり、この方法で、2つずつ次数を下げていき、
あとは、
$I_0=\frac{\pi}{2}$ もしくは、$I_1=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin xdx=[-\cos x]_0^{\frac{\pi}{2}}=1$
を使うことで、求めましょう.

授業中注意したように、問題1-1(2-b) をやる際に、$28\cdot 26\cdot 24\cdots2$ などを計算することになりますが、
$(2n)!!=2n(2n-2)(2n-4)\cdots 4\cdot 2$ や
$(2n-1)!!=(2n-1)(2n-3)(2n-5)\cdots 3\cdot 1$
などの公式を使って2重階乗の記号 $!!$ を用いてください.

開集合、境界点

ここから先は、微積分IIの講義の予習となります.教えたのは、開集合と境界点だけです.

開集合

とりあえずここでは、$X$ を ${\mathbb R},{\mathbb R}^2$ などとしておきます.

$X$ 内のある領域 $A$ に対して、$A$ が開集合であるとは次のようなものをいいます.(ここで、領域とは、$X$の (直線上の、または平面上の)あらゆる部分集合をさします.)


定義(開集合)
$A$ が開集合であるとは、任意の ${\bf x}\in A$ に対して、${\bf x}$ を中心として半径が $\epsilon>0$ の開区間 $\{r\in{\mathbb R}|{\bf x}-\epsilon<r<{\bf x}+\epsilon\}$ が存在して、その開区間の全ての元が $A$ の中に含まれる.

$X={\mathbb R}^2$ の場合は、上の定義の開区間は$x$ を中心とした半径 $\epsilon>0$ の開円盤(境界はない)と書き換えてください.

$X$ が直線の場合は、${\bf x}$ はある実数を表し、$X$ が平面の場合は、${\bf x}$ はある点 $(x,y)$ を表します.

開区間の場合は、$\{y|x-\epsilon<y<x+\epsilon\}\subset A$ とでき、
開円盤の場合は、$\{(x',y')\in {\mathbb R}^2|(x-x')^2+(y-y')^2<\epsilon^2\}\subset A$

とできるということです.
 $A=\{r\in {\mathbb R}|0<r<1\}$ の場合の証明を書いておくと、
(証明)$x\in A$ を任意にとる.このとき、$\epsilon$ を $\epsilon=\frac{1}{2}\min(|1-x|,|0-x|)$ とすると、$x-\epsilon>0$ であり、$x+\epsilon<1$ が成り立ちます.
ゆえに、$\{y\in{\mathbb R}|x-\epsilon<y<x+\epsilon\}\subset A$ が成り立つので、$A$ が開集合であることがわかる.$\Box$

ここで、$\min$ をとってさらに $\frac{1}{2}$ をしていますが、これはなくても大丈夫ですし、$\frac{1}{3}$ としても証明は成り立ちます.
また、$\min(\alpha,\beta)$ は、$\alpha,\beta$ のうち、小さい方をとるという関数です.

この区間、円盤は、次元によって区別せず、どちらも教科書では、$U_\epsilon({\bf x})$ と書いてありますね.これ以降はこの記号を使っていきます.

境界点

定義(境界点)
$x\in X$ が $A$ の境界点であるとは、
任意の $\epsilon>0$ に対して、
$U_\epsilon(x)\cap A\neq \emptyset$ かつ、
$U_\epsilon(x)\cap A\neq \emptyset$
の両方が成り立つ.

ということです.$X$ が平面の場合は、この区間 $U_\epsilon(x)$ の代わりに $(x,y)$ を中心とした半径が $\epsilon$ の円盤に変わるだけです.


つまり、境界点の定義は、その点の周りにどんな小さい区間、もしくは円盤を取ってきても、$A$ の元もそうでない元も両方現れるということを言っています.

$A=\{r\in{\mathbb R}|0<r<1\}$ の場合に、$0,1$ が境界点であることを示すには、以下のように書くと良いでしょう.

(証明) $x=0$ とします.この時、任意の$\epsilon>0$ をとる.
$\epsilon_1=-\frac{1}{2}\epsilon\in U_\epsilon(0)$
$\epsilon_2=\frac{1}{2}\min(\epsilon,1)\in U_\epsilon(0)$
をとる.
このとき、$\epsilon_1<0$ であり、$0<\epsilon_2<1$ なので
 $\epsilon_1\in A^c$ かつ、$\epsilon_2\in A$ が成り立つ.
よって、任意の $\epsilon$ に対して、$U_\epsilon(x)$の元で、$A$ にも入るものも、$A$ に入らないものも見つかるので、$0$ は境界である.

$x=1$ とします.この時、任意の$\epsilon>0$ をとる.
$\epsilon_1=1-\frac{1}{2}\epsilon\in U_\epsilon(1)$
$\epsilon_2=1+\frac{1}{2}\min(\epsilon,1)\in U_\epsilon(1)$
をとる.
このとき、$\epsilon_1>1$ であり、$0<\epsilon_2<1$ なので
 $\epsilon_1\in A^c$ かつ、$\epsilon_2\in A$ が成り立つ.
よって、任意の $\epsilon$ に対して、$U_\epsilon(1)$の元で、$A$ にも入るものも、$A$ に入らないものも見つかるので、$1$ は境界である.$\Box$

$A^c$ は $A$ ではない集合、つまり、$A$ の補集合を表します.

同じことは、2日後の微積分IIの講義の方でもやると思いますので、
そちらを復習ということで聞いておいてください.


問題1-2について

手習い塾でこの問題について質問した人がいました。
この問題を解くには、定義に戻って考えることができるかということです。

$B=\{(x,y)|x^2+y^2<1\}$ が開集合であることを示すには、上の定義に戻ってください。
示せば良いことは、$B$ の任意の元 $p=(x,y)\in B$ を取ってこれば、
その点 $p$ を中心とした半径が $r$ の円盤が取れて、その円盤が $B$ の中に収めることができる、ということです。

示すことは、$r$ をどれほど小さく取れば、$B$ の中に $p$ を中心とした半径 $r$ の円盤を $B$ の中に置くことができるかを示して下さい。

$p$ の場所によって、 $r$ は違ってきます。一般に $(x,y)$ に対して
どのように $r$ を取れば良いでしょうか?
例えば、$p=(1/2,0)$ を取った時にはどうなるでしょうか?
おそらく、$r=1/2$ くらいで大丈夫でしょう.
$p=(0,1/2)$ の場合はどうでしょうか?
$(1/2,1/2)$ の場合は?色々考えて行けば、一般に、$p=(x,y)\in B$ の場合もわかると思います。

ヒントは、$p$ を中心とした円を $B$ の境界が交わらないように(さらにその円を $B$ の内部に)取れば良いことがわかるはずです.

$(x,y)$ に対してどのように $r$ を取れば良いかが書かれていれば正解とします。


次に境界点ですが、上に書いたように、境界点は、その点を中心としてどんなに小さい(大きい)半径を取っても $B$ の元も $B$ でない元も取ることができることを示してください。

つまり、$p$ を中心とする半径が $r$ の円盤を $U_r(p)$ とすると、$U_r(p)\cap B$ も
$U_r(p)\cap B^c$ の空集合ではないことを示せば良いです。
$B^c$ は平面上で $B$ でない点(補集合)を表します。

つまり、どんな$r$ を取っても、そのような点を一つずつ選ぶことができれば良いです。

$\{(x,y)|x^2+y^2=1\}$ の点 $p=(x,y)$ を取ると、$U_r(p)$ には、原点からの距離が1以下の点
も1以上の点も含まれることを示して下しさい。

これは、紙の上に絵を描いてじっくり考えればわかると思います。
どこらへんに取れば良いでしょうか?

わからなければ、メールするか、下のコメント欄に書いても構いません。


手習い塾で質問してきた人に出したもっと簡単な演習問題を出しておきます.
$(x,y)$ 平面上の原点を $A$ とします.つまり、$A=\{(0,0)\}$ です.
このとき、$A$ の内点はどこでしょう?(もしくは、$A$ は開集合でしょうか?)
また、$A$ の境界点はどこでしょうか?

答えだけ下に書きます.証明を考えて下さい.















$A$ の内点は空集合.$A$ は開集合ではない.また、$A$ の境界点は $\{0,0)\}$ となる.
$A$ 外点は、$A$ の補集合の内点のことであり、原点以外の平面の全ての点となる.

2016年10月3日月曜日

トポロジー入門演習(第1回)

[場所1E103(月曜日4限)]

HPに行く.

今日から秋学期が始まりました。
トポロジー演習も始まりました。今日の内容は、
授業についてのガイダンスや成績のつけ方などと


  • 距離空間であることの示し方
  • 開集合、境界点、内点
などです。初回はあまり解いてくれる人も少ない時もありますが、今日は、比較的多くの人が解いていたような気がします。解いた人の情報は、ホームページ上に
近々アップします。

ここでは今日の復習をします。

距離空間であること

距離空間であることを示す方法は、去年のものがありましたので、リンクさせて
おきます.去年やった同じ問題についての解説を書いています.
今日発表してくれた人も何人かいますね.


このページと、今日の解説を見ればわかると思いますが、
空間 $X$ と関数 $d:X\times X\to {\mathbb R}$ が $X$ 上で距離関数の性質を満たせば
$d$ が距離関数になり、$(X,d)$ が距離空間になります.距離空間の性質を今日説明した感じで書いておくと、


(1) $d(x,y)\ge 0$、かつ  $d(x,y)=0\Leftrightarrow x=y$
(2) $d(x,y)=d(y,x)$、
(3) $d(x,z)\le d(x,y)+d(y,z)$ 


となります.
さらに去年の同じページに、以前書いた、距離空間と位相空間についての関係について
も書きました.


距離空間や位相空間で何をするのかがわかると想います.

また、今日配ったプリントは、がなかったので、
来週は、トポロジー演習で使う用語集の方も作成して渡します.

内点、境界点、外点

今日のトポロジー入門の授業ではやらなかったようですが、問題を解いている人が
いたので、ここで先に説明しておきます.
ここで、中心を $x$ とし半径が $r$ となる球体
$$\{y\in X|d(x,y)<r\}$$
のことを、
$$B(x,r)$$

と書くことにします.この書き方は、共通なものではなく、本によっては、
$U(x;r)$ と書いたり、$B_r(x)$ や $B_x(r)$ などと書くこともあります.
どれも同じものです.

開集合
まず、$A\subset X$ が距離空間 $X$ の開集合であるとは、任意の $p\in A$ に対して、
ある $\epsilon>0$ が存在して、$p\in B(p,\epsilon)\subset A$ となるようにできる.

つまり、開集合とは、どのどの点でも、その点を中心とした開球体を内部に置く
ことができるということです.ある集合が開集合であることを示すには、
必ずこの定義に戻って考えます.

ちなみに、開球は、名前の通り、開集合です.

距離空間 $X$ において、部分集合 $A\subset X$ の内点、外点、境界点は
以下のようにして定義します.

内点
$p$ が $A$ の内点であるとは、ある $\epsilon>0$ が存在して、$B(p,\epsilon)\subset A$ となることをいう.

外点
$p$ が $A$ の外点であるとは、ある $\epsilon>0$ が存在して、 $B(p,\epsilon)\subset A^c$ となることをいう.

境界点
$p$ が $A$ の境界点であるとは、任意の $\epsilon>0$ に対して、$B(p,\epsilon)\cap A\neq \emptyset $ かつ $B(p,\epsilon)\cap A^c\neq \emptyset $となることをいう.

となります.今日、証明してくれたいたように、境界点は、距離空間の中で、内点でも外点でもない点ということになります.


最後に、

トポロジー(位相空間論)の演習は、発表中心に行いますが、どんな簡単な問題でも、
論理的に飛躍があったり、ごまかしたりするところがありましたら、どんどん突っ込んで
いこうと思っています.これまでの演習より厳しめかもしれませんが、そのような
演習を通して、位相空間論に限らず、ちゃんと証明できる技術を養っていければと思っています.

また、

あたりまえだと思えることでも、
数学の命題は、定義に戻れば必ず証明することができる

ことを忘れてはいけません.自分の感覚で、いつもこうだから
では数学はできません.

いかにして、数学の証明を書くか、発表をするかについての心構えについては、
去年のトポロジー入門演習のページに書きましたので、これについても
リンクしておきます.

トポロジー入門演習(第3回)の後半部分



この演習を通して、それらを身につけていってください.