2017年5月2日火曜日

微積分I演習(数学類)(第3回)

[場所1E103(水曜日4限)]

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今日は、関数について以下の項目
  • 宿題の解答
  • 上限の求め方
などについてやりました。

宿題の解説など
宿題は 
$\lim_{n\to \infty}(1+\frac{1}{n^2})^n$ の収束と、
$a_n=n!/n^n$ としたときの、$\lim_{n\to \infty}a_n/a_{n+1}$ の極限値でした。

前半の方は、
$\left(1+\frac{1}{n^2}\right)^n=\left(\left(1+\frac{1}{n^2}\right)^{n^2}\right)^{\frac{1}{n}}$ と式変形すれば、$\log$ をとって、
$\frac{1}{n}\log(1+\frac{1}{n^2})^{n^2}$ となるので、積の極限の公式から、
$\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}\lim_{n\to \infty}\log(1+\frac{1}{n^2})^{n^2}$ 
と等しくなり、それぞれ、$0$, $1$ に収束するので、
全体として $0$ に収束することがわかります。

よって、$\log$ が単調増加な連続関数なので、$\log$ を取り払った
$\left(1+\frac{1}{n^2}\right)^n$ は $1$ に収束することがわかります。

一般に、$a_n\to \alpha>0$ に収束するなら、$\sqrt[n]{a_n}\to 1$ になります。
議論は、今のように、$\log$ をとってから収束先を決定し、あとで $\log$ をとる
という方法です。

ただ、$a_n\to 0$ の場合は注意が必要です。ようするに、収束先として $0^0$ のような
数は存在しません。

一般に数列 $\sqrt[n]{a_n}$ は、このように考えることができます。

まず自明な例として、$a_n=a^{n}$ であるとすれば、
$\sqrt[n]{a_n}=a$ ですので、明らかに $\sqrt[n]{a_n}$ 収束がいえます。

また、$f(n)$ を多項式数列 $f(n)$ ( $f(n)>0, \forall n$ と仮定します) とします。
多項式数列とは、$f(x)$ がある多項式であるような多項式です。
多項式数列は、任意の指数増大関数 $a^n\ \ a>1$ と比べると小さいです。
つまり、十分 $n$ を大きくすると、
$$\frac{f(n)}{a^n}<1$$
となるということです。

つまり、$n$ を十分大きくしてやると、$f(n)$ は十分大きくなり、
$1<\sqrt[n]{f(n)}<a$ がいえます。$a$ を任意に $a>1$ となる実数を取って来たことを
考えると、いわゆる挟み撃ちの原理から、$\sqrt[n]{f(n)}\to 1$ であることがわかります。

また、これらを合わせた増大関数として、$b_n=a^n$ かつ、$c_n$ を多項式数列や
収束する数列などであるとし、$a_n=b_nc_n$ とするなら、
$\sqrt[n]{a_n}=\sqrt[n]{b_n}\sqrt[n]{c_n}$ なので、
積の極限操作から、$\sqrt[n]{b_nc_n}\to a$ であることがわかります。

つまり、一般に、$\sqrt[n]{a_n}$ という数列は 数列 $a_n$ の指数増大度(減少度)の部分を
取り出しているということができます。(もちろんこれだけでは証明にはなりませんが。。)

ここで、$\sim$ という記号を、$f(n)\sim g(n)\Leftrightarrow f(n)/g(n)\to 1\ \ (n\to\infty)$ 
として定義しておきます。この記号を使えば、数列が漸近的にどのような振る舞い
をするかがわかります。

上で書いたことは、次のように一般化できます。

$f(n)$ を 多項式数列として、$a_n\sim a^nf(n)$ であるなら、$\sqrt[n]{a_n}\sim  a$ が成り立つ。

特に、
$a_n\sim 1\Leftrightarrow a_n\to 1$ であるなら、$\sqrt[n]{a_n}\sim a$ となります。

$f(n)$ 有理数列 $f(n)=\frac{p(n)}{q(n)}$ であるときも同じで、
$\sqrt[n]{f(n)}\to 1$ となります。ここで、$p(n),q(n)$ が多項式数列。

また、$a_n=e^{e^n}$ として、$\sqrt[n]{a_n}$ を考えると、指数増大より大きすぎて
$\infty$ に発散してしまいます。つまり、この数列は、$\sqrt[n]{a_n}$ は指数増大
より真に大きいということがいえます。この場合、
$\sqrt[n]{a_n}\sim e^n$ にはならず、$\sqrt[n]{a_n}\sim e^{e^n/n}$ となるだけです。

今回の宿題でもあるように、
$a_n=\frac{1}{n}$ などとしてとると、$\frac{1}{n}$ は有理式として考えることが
できるので、$\sqrt[n]{a_n}$ は 1 に収束します。
もちろん宿題ではこのような解答はNGです。

$\sqrt[n]{n}$ の収束に関しては、前回のblog(リンク)に書きましたが、
よく考えたら、次のような解答もありえました。

$\sqrt[n]{n}$ の有界性と単調性を考えればよいですが、

$\sqrt[n+1]{n+1}<\sqrt[n]{n}$ であることは、
$n\ge 3$ のときに、$(n+1)^n>n^{n+1}$ となることとを証明すればよいのですが、
(前回の命題)

実際は、この式、$(n+1)^n<n^{n+1}$ を$n^n$ で割ってやると、
$(1+\frac{1}{n})^n<n$ を示せばよいことなります。

ここで、知識として、$(1+\frac{1}{n})^n$ が単調増加で $e$ に収束するという事実を
使いますと、明らかに、$(1+\frac{1}{n})^n<e$ となります。

よって、$(1+\frac{1}{n})^n<n$ が成り立つためには、やはり、$3\le n$ であれば十分ということになります。
なので、$n^{\frac{1}{n}}$ が 3 から単調減少であったわけは、$e=2.7....$ であることから
来ていたということがわかります。

次の宿題であったところは、

$${\mathbb Z}=5{\mathbb Z}+7{\mathbb Z}$$

の等式の証明でした。できていた人も多かったのですが、簡潔に、というか形式的に
${\mathbb Z}\subset 5{\mathbb Z}+7{\mathbb Z}$
$5{\mathbb Z}+7{\mathbb Z}\subset {\mathbb Z}$
だけ示していた人はいませんでした。

1が5,7から作られるという証明の本質を使っているということを指摘している人は多かったです。(ヒントでも書きましたし。)

このように証明(答え)は一瞬で終わります。

$\forall x\in {\mathbb Z}$ とするとき、
$x=5(3x)+7(-2x)$ と書け、$3x,-2x\in {\mathbb Z}$ なので、$x\in 5{\mathbb Z}+7{\mathbb Z}$ である。
また逆に $\forall x\in 5{\mathbb Z}+7{\mathbb Z}$ とするなら
$x=5p+7q$ とかける。($p,q\in {\mathbb Z}$ ) ${\mathbb Z}$ は掛け算、足し算で閉じているので、$x\in {\mathbb Z}$ である。

ゆえに、
$${\mathbb Z}=5{\mathbb Z}+7{\mathbb Z}$$
がいえる。

宿題1-3に関しては省略します。

上限・下限
上限や下限は、となりの授業(2017物理学類の微積分I演習)でもやりました(リンク)

$E$ を実数の部分集合とします。
このとき、$y\in {\mathbb R}$ が $\forall x\in E$ に対して、$x\le y$ となるとき、$y$ を $E$ の上界といいます。上界の集合を $S$ と書くとすると、
$$\sup(E)=\min S$$
とかいて、$\sup(E)$ は $E$ の上限と言います。

$s=\sup(E)$ であることは以下の条件と同値になります。

(1)    $\forall x\in E$ に対して、$x\le s$ を満たす。
(2)       $\forall s’<s$ に対して $\exists t\in E$ が $s’<t<s$ を満たすこと。

最後の条件(2)は、次と同値です。
(2)'     $\forall x\in S$ に対して、$s\le x$ 



これらの条件(1),(2)の意味は、
$s\in S$ であること。
$\forall s’<s$ に対して $s’\not\in S$ であること。

と同じです。

$y\in {\mathbb R}$ が $\forall x\in E$ に対して、$y\le x$ となるとき、$y$ を $E$ の下界といいます。下界の集合を $T$ と書くことにすれば、
$$\sup(E)=\max T$$
とかいて、$\inf(E)$ は $E$ の下限と言います。

$s=\inf(E)$ であるための必要十分条件は上と同じようにいうことができます。
ここでは省略。


(例) $E=\left\{\frac{1}{n}|n\in {\mathbb N}\right\}$ としたとき、$\inf(E)=0$ であることの証明。
宿題もこれに則ってやってください。

$0=\inf(E)$ であることを証明します。
$T$ を $E$ の下界の集合とします。
このとき、$\forall n\in {\mathbb N}$ に対して $0\le \frac{1}{n}$ であるので、$0$ は $E$ の下界の集合に含まれる。つまり、$0\in T$ である。(1) が満たされた。

また、$0<s’$ を任意にとると、アルキメデスの原理より、$\frac{1}{s’}<n$ となる自然数 $n$ が存在します。これを書き直すと、$0<\frac{1}{n}<s’$ が言えて、$\frac{1}{n}\in E$ となります。これは、(2) が満たされています。

よって、$0=\inf(E)$ となります。

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