2017年5月31日水曜日

微積分I演習(数学類)(第6回)

[場所1E103(水曜日4限)]

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今回は
  • ロピタルの定理
  • マクローリン展開
についてやりました。



ロピタルの定理
ロピタルの定理とは、不定形の極限の計算にとても有効です。
極限操作が不定形であるとは、$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}$ の極限で
$x\to a$ となった時に、分母と分子が両方 $0$ に行くか、両方 $\pm \infty$
に行くかということです。

ロピタルの定理を使うと、多くの不定形の極限の計算が楽になります。
それ以前の不定形の極限の計算は、関数を約分をするとか、微分の定義を使うくらいしか
道具ありません。

例えば、
$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1}{x}$ の計算は、ちょうど $e^x$ の $x=0$ の定義になっているから、$e^x$ を微分して、$x=0$ を代入することで、$1$ と求まります。

また、高校の頃に出て来た不定形の極限では、$\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1$ が
ありますが、これも、$\sin x$ の $0$ での微分係数を求めていることになりますから、
$\cos 0=1$ であることからわかります。

ロピタルの定理を書いておきます。

定理(ロピタル)
$a$ を実数もしくは無限大とする。
$f(x),g(x)\to 0$ $(x\to a)$ もしくは、
$f(x),g(x)\to \pm\infty$ $(x\to a)$ が成り立つとする。
もし、$f,g$ が1回微分可能であり、$\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}$ が存在したとすると、
$$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}$$
がなりたつ。


まず、分母と分子の導関数の比の極限が存在すれば、一致するという
ことです。ですので、存在しなければ求めることはできません。
また、分母と分子の導関数の比もまた不定形であれば、再びロピタルの定理を
適用させることができます。

そのようにして、何回かロピタルの定理を適用させることで、不定形の極限を求めることができます。しかし、可能性として、何回もロピタルの定理を適用させても
不定形しか出てこないこともあります。
そのような場合、ロピタルの定理では求めることはできません。

簡単な例だと、$\lim_{x\to \infty }\frac{e^{x}}{e^{2x}}$ があります。
この場合、$e^{x}$ を約分してやることで、$0$ に収束することがわかります。

例えば、
$\lim_{x\to 0}\frac{\tan x-x}{\sin^3 x}$ を求めるとします。
導関数の比の極限は、$\lim_{x\to 0}\frac{\frac{1}{\cos^2 x}-1}{3\sin^2x\cos x}$
となり、これも不定形となります。

一度、分母を払って変形をすると、
$$\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos^2 x}{3\sin^2x\cos^3 x}=\lim_{x\to 0}\frac{\sin^2 x}{3\sin^2x\cos^3 x}=\lim_{x\to 0}\frac{1}{3\cos^3 x}=\frac{1}{3}$$
となります。

他にもやってみます。
$\lim_{x\to 0}\frac{x^2}{\cos^2 x-1}$ を計算します。
$$\lim_{x\to 0}\frac{2x}{2\cos x(-\sin x)}=\lim_{x\to 0}\frac{-1}{\cos x}\lim_{x\to 0}\frac{x}{\sin x}$$
なります。ここで、極限を分離した理由は、不定形でない部分をくくりだすためです。

後半部分は再度ロピタルの定理を当てはめればよいですが、この場合、
$\sin x/x$ の極限だから、ロピタルの定理は省略して、$1$ に収束するとして結論づけます。
よって、全体として、$\lim_{x\to 0}\frac{x^2}{\cos^2 x-1}=-1$ となります。


マクローリン展開

次にランダウの記号を用いたマクローリン展開をします。
まず、
$e^x$ の $x=0$ での微分の式
$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1}{x}=1$
を用います。

このとき、右辺を移項して、
$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1-x}{x}=0$ が成り立つので、
$e^x=1+x+o(x)$ が成り立ちます。
次に、この極限の式に $x$ で割って、
$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1-x}{x^2}$ を計算すると、ロピタルの定理から、
$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1}{2x}$ となり、この極限は、上の微分の定義式から、$\frac{1}{2}$
となります。
ゆえに、$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-1-x-\frac{1}{2}x^2}{x^2}=0$ が言えます。
これは、
$e^x=1+x+\frac{1}{2}x^2+o(x^2)$
を意味しています。この流れで繰り返せば、次は、
$e^x=1+x+\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{6}x^3+o(x^3)$
が成り立ち、続けていけば、帰納的に
$$e^x=1+x+\frac{1}{2!}x^2+\frac{1}{3!}x^3+\cdots +\frac{1}{n!}x^n+o(x^n)$$
が言えます。

この最後の帰納的にはの部分は、帰納法を用いて証明が本当はいります。
宿題ではその部分を示してください。

また、このように繰り返し作業でマクローリン展開を求める方法は
ランダウの記号やロピタルの定理の適用することで、納得するための
やり方です。

マクローリン展開の公式を習った後であれば、その公式を使って
計算した方が本当は早いです。

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