2017年7月10日月曜日

微積分I演習(物理学類)(第11回)

[場所1E103(金曜日5限)]

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今回は、

  • 広義積分の収束
についてやりました。

広義積分の収束について
広義積分が収束するということは、
$[a,b)$ 上の関数 $f(x)$ において、$\int_a^bf(x)dx$ の値を求めることです。

つまり、通常なら区間の端まで値が求められるような関数を定積分をしますが、
ここでは端で値が定義できないような開区間において関数の積分を考えます。

ですので、例えば、$b=\infty$ であるような場合や、$\lim_{x\to b}f(x)=\infty$
であるような場合が広義積分の対象となります。

また、扱う関数 $f(x)$ は $[a,b)$ 内の任意の閉区間上で値をもち、
積分が可能(リーマン積分可能)とします。

そのとき、広義積分は、
$$\int_a^bf(x)dx=\lim_{c\to b}\int_a^cf(x)dx$$
として定義されます。
つまり、それより幾分か小さい閉区間で積分を計算しておき、その極限として
広義積分を定義します。

例えば、
$$\int_0^\infty e^{-x}dx=\lim_{c\to \infty}\int_0^ce^{-x}dx=\lim_{c\to \infty}\left[-e^{-x}\right]_0^c=\lim_{c\to \infty}(1-e^{-c})=1$$

のように計算されます。

また、値がよく知っている値として求められなくても、
極限が存在するかどうかが知りたい場合があります。
つまり、この極限が収束するかどうかです。
そのよい判別方法として、優関数法というのがあります。

広義積分の収束性としてよく素性の知れた関数 $g(x)$をもってきて、
比べてみるという方法です。


優関数法
$|f(x)|\le g(x)$ であることがわかれば、
$\int_a^bg(x)dx$ が収束するなら、$\int_a^bf(x)dx$ も収束します。
また、

$0<g(x)\le f(x)$ であれば、
$\int_a^bg(x)dx$ が発散するなら、$\int_a^bf(x)dx$ も発散します。


例1
例えば、$\int_0^{\infty}\frac{\sin x}{e^x+1}dx$ の収束性を知りたいとします。
このとき、

$$|\frac{\sin x}{e^x+1}|\le \frac{1}{e^x+1}\le \frac{1}{e^x}=e^{-x}$$
となり、先ほどの計算から、
$\int_0^\infty e^{-x}dx$ は収束するので、
$\int_0^\infty\frac{\sin x}{e^x+1}dx$ は収束します。


例2
$\int_0^\infty \frac{x^n}{e^x}dx$ なる広義積分も、
$e^{-x}$ の広義積分の可能性に帰着することもできます。

$$\frac{x^n}{e^x}=\frac{x^n}{e^{\frac{x}{2}}}e^{-\frac{x}{2}}$$
と変形します。

また、
$\lim_{x\to \infty}\frac{x^n}{e^{\frac{x}{2}}}=0$ であることは
ロピタルの定理によりわかります。

なので、ある 十分大きい $x_0$ に対して任意の $x>x_0$ において、
$|\frac{x^n}{e^{\frac{x}{2}}}|\le 1$ であるから、

$x>x_0$ において、$|\frac{x^n}{e^x}|\le e^{-\frac{x}{2}}$ となり、
よって、同じように

$\int_{x_0}^\infty e^{-\frac{x}{2}}dx$ は収束するので、

広義積分
$$\int_{x_0}^\infty \frac{x^n}{e^x}dx$$
は収束します。
$\int_0^{x_0}f(x)dx$ は通常の積分として有限な値として計算できるので、

広義積分
$$\int_0^\infty \frac{x^n}{e^x}dx$$
は収束します。

例2の別解
また、$x=0$ で $e^x$ のマクローリン展開をすると、

$e^x=1+x+\frac{x^2}{2}+\cdots +\frac{x^n}{n!}+\frac{x^{n+1}}{(n+1)!}+\frac{x^{n+2}}{(n+2)!}+\cdots+$
であり、$x>0$ において $e^x>\frac{x^{n+2}}{(n+2)!}$ が成り立ちます。

ゆえに、$x>0$ において、
$$|\frac{x^n}{e^x}|<\frac{x^n}{\frac{x^{n+2}}{(n+2)!}}=(n+2)!\frac{1}{x^2}$$
であり、

$\int_1^\infty \frac{1}{x^2}dx=1$ であるので、
$\int_1^\infty \frac{x^n}{e^x}dx$ も収束し、
ゆえに、

$\int_0^\infty \frac{x^n}{e^x}dx$ も収束します。



べき関数の収束発散
指数関数の積分と比べるものの他に上のように 
べき関数 $x^s$ の積分と比べる場合もまあまああります。

$\int_1^\infty \frac{1}{x^s}dx$ が収束するのは、$s>1$ であるときでそのときに限ります。
$s=1$ は発散する方に入っており、実際計算すれば、
$\int_1^\infty \frac{1}{x}dx=\lim_{x\to \infty}\log x=\infty$
のように、$\log$ の速さで大きくなるからです。

有限の値で無限に発散する場合も、

$\int_0^1\frac{1}{x^s}dx$ が収束するのは、$0<s<1$ であり、
$s\ge 1$ において、この積分は発散します。

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