2018年1月30日火曜日

トポロジー入門演習(第13回)

[場所1E202(月曜日4限)]

HPに行く
今回は

  • コンパクト空間
についてやりました。

まず、$X$ の部分集合族 $\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ が
$A\subset X$ の被覆であるとは、
$A\subset \cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda$
となるようなもののことをいいます。
特に、被覆は $\mathcal{P}(X)$ の部分集合です。
すべての $U_\lambda$ を $A$ と共通部分を取って
$\{U_\lambda\cap A|\lambda\in \Lambda\}$ を考えることで、
$A$ の被覆を $A$ での開集合によって覆ったものと考えることもできます。

被覆 $\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ のすべてが開集合であるとき、
この被覆は開被覆であるといいます。

また、$\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ を $A$ の被覆とし、
$\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda'\}$ がその部分被覆であるとは、
これが $A$ の被覆であって、$\Lambda’$ は $\Lambda$ の部分集合であることをいいます。
また、$A$ の有限被覆とは、$A$ の被覆 $\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ で、$\Lambda$ が有限集合のものをいいます。

コンパクトの定義を書いておきます。

定義(コンパクト)
$\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ を任意の $X$ の開被覆とする。このとき、$\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ は、有限部分被覆をもつ。

例えば、以下の定理があります。

定理1
連続写像 $f:X\to Y$ とする。このとき、$A\subset X$ がコンパクトとする。
このとき、$f(A)\subset Y$ はコンパクトである。

定理2
コンパクト集合の閉部分集合は、コンパクト集合。


定理1の証明です。
$\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ を $f(A)$ の開被覆とします。
つまり、$f(A)\subset \cup_{\lambda\in \Lambda} U_\lambda$ となる
$Y$ の開集合、$U_\lambda$ がとれます。
$A\subset f^{-1}(f(A))\subset f^{-1}(\cup_{\lambda\in \Lambda} U_\lambda)=\cup_{\lambda\in \Lambda}f^{-1}(U_\lambda)$
$A$ はコンパクトであるので、$A$ の開被覆 $\{f^{-1}(U_\lambda)\}$  は、有限部分被覆が存在して、$A\subset \cup_{i=1}^nf^{-1}(U_{\lambda_i})$ となる。

よって、$f(A)\subset \cup_{i=1}^nU_{\lambda_i}$ となり、$\{U_{\lambda_i}|i=1,\cdots, n\}$
は、$\{U_{\lambda}|\lambda\in \Lambda\}$ の部分開被覆となります。
よって、$f(A)$ はコンパクト.



定理2の証明です。
$X$ をコンパクトとする。$A\subset X$ を閉集合とします。
$\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ を$A$ の開被覆とします。
このとき、$\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}\cup\{X\setminus A\}$ は
$X$ の開被覆となります。$X$ はコンパクトなので、
有限部分被覆が存在して、$\{U_{\lambda_i}|i=1,...,n\}\cup\{X\setminus A\}$ 
は、$X$ の被覆となります。
よって、$\{U_{\lambda_i}|i=1,...,n\}$ は $A$ の被覆となります。
つまり、$A$ はコンパクト。

${\mathbb R}$ はコンパクトではないが、任意の有限な閉区間 $[a,b]$ は
コンパクトになります。

以下ではこれを示しておきましょう。

$\{(n,n+2)|n\in  {\mathbb Z}\}$ は${\mathbb R}$ の開被覆となりますが、
この被覆のどの有限部分被覆をとっても、有界集合しか覆えません。
とくに、その有限部分被覆は ${\mathbb R}$を覆うことができないので
${\mathbb R}$ はコンパクトではない。

$[a,b]$ のコンパクト性を示します。
$\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ を$[a, b]$ の任意の被覆としましょう。
とくに、$U_\lambda$ は${\mathbb R}$ の開集合で、
$[a,b]\subset \cup_{\lambda\in \Lambda}U_\lambda$
となります。

$a\le x\le b$ として、$[a,b]$ の部分集合 $A$ を、
$[a,x]$ が有限個の $\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$ の
部分被覆で覆えるような $x$ の集合とします。
つまり、$A$ は
$$A=\{x|[a,x]\text{は有限個の $U_\lambda$ によって覆える}\}$$
として定義します。
$x=a$ とすると、明らかになりたつので、$A$ は空集合ではありません。
いま、$\sup(A)=z<b$ とすると、$z\in U_\lambda$ を満たす
$\lambda\in \Lambda$ が存在します。また、
ある $\epsilon>0$ で、$z-\epsilon\in U_\lambda$ となるような実数が
存在します。このとき、$[a,z-\epsilon]$ は有限部分被覆が存在するので、それを
$U_{\lambda_1},\cdots, U_{\lambda_n}$ とすると、
$U_{\lambda_1},\cdots, U_{\lambda_n},U_\lambda$ は、$[a,z]$ の
有限部分被覆となります。
いま、$U_\lambda$ は開集合なので、$z+\delta\le b$ として、
$[z,z+\delta]\subset U_\lambda$
であり、$U_{\lambda_1},\cdots, U_{\lambda_n},U_\lambda$ は
$[a,z+\delta]$ の有限部分被覆でもあることになります。
これは $\sup(A)=z$ であることに矛盾します。
ゆえに、$z=b$ が満たされ、$[a,b]$ には $\{U_\lambda|\lambda\in \Lambda\}$
の有限部分被覆が見つかることになります。
(証明終了)

系1
${\mathbb R}$ の任意の有界閉集合はコンパクトである。

$A$ を ${\mathbb R}$ の任意の有界閉集合とします。
このとき、$A\subset [a,b]$ となる $a,b$ が存在し、
$[a,b]$ はコンパクトだったから、$A$ はコンパクト集合の中の閉集合であるから
コンパクト。


系2
${\mathbb R}$ のコンパクトな部分集合 $A$ は、有界閉集合である。

$\forall a\in A$ に対して、$\{B_d(a,r)|r>0\}$
は、$A$ の開被覆であるが、$A$ がコンパクトであることから、
正の実数 $r_1,\cdots, r_n$ が存在して、
$\{B_d(a,r_i)|i=1,...,n\}$ が $A$ の被覆になる。
しかし、実際、$r_1,\cdots, r_n$ のうち最大のものを $r$ とすると、$A$
は $B_d(a,r)$ によって被覆されます。
ゆえに、$A$ は有界。

$\forall a\in{\mathbb R}\setminus A$ としましょう。
このとき、$\{\overline{B_d(a,r)}^c|r>0\}$ は $A$ の開被覆。
($c$ は補集合の $c$ 。)
$A$ はコンパクトなので、有限個の $r_1,\cdots, r_n$ が存在して、
$\{\overline{B_d(a,r_i)}^c|i=1,...,n\}$ は $A$ の開被覆になります。
実際、$r_1,...,r_n$ のうちの最小のものを $r$ とすると、$\overline{B_d(a,r)}^c$
は $A$ を被覆します。つまり、$A\subset \overline{B_d(a,r)}^c$ であるから
とくに、$A\cap B_d(a,r)=\emptyset$ となります。
よって、$A$ の補集合の任意の点 $a$ は、
$B_d(a,r)\subset A^c$ となる開近傍をもつので、
$A^c$ は開集合。つまり、$A$ は閉集合となります。

この証明は、${\mathbb R}$ だけでなく、一般の距離空間で成り立ちます。

また、${\mathbb R}$ においては、
$A\subset {\mathbb R}$ がコンパクトであることと有界閉集合であることは
同値です。

0 件のコメント:

コメントを投稿