2018年5月11日金曜日

外書輪講I(第3回)

[場所1E503(月曜日5限)]

HPに行く

今回は先週残った線形代数の発表とマトウセクのMiniature 1,2をやりました。

線形代数の問題についていくつか
(3)
2次元ベクトル空間 $V$ の任意の3つのベクトルは一次従属である。

(学生が行った解答)
${\bf a},{\bf b },{\bf c}$ を任意の3つのベクトルとする。
このとき、${\bf a},{\bf b}$ が一次独立であるとすると、
2次元ベクトル空間の2つの一次独立なベクトルは基底であるから、
${\bf c}=u{\bf a}+v{\bf b}$ とすることができる。
よって、$u{\bf a}+v{\bf b}-{\bf c}=0$ という関係式が得られたので
${\bf a},{\bf b},{\bf c}$ は一次従属である。

${\bf a},{\bf b}$ が一次従属であるとすると、
$(u,v)\neq (0,0)$ であって、$u{\bf a}+v{\bf b}=0$ とできる。
よって、
$u{\bf a}+v{\bf b}+0{\bf c}=0$ であるからこの関係式から
${\bf a},{\bf b},{\bf c}$ は一次従属である。


(別解答)
2次元ベクトルであるということは、基底として2つのベクトルを取ることができる
ということだから、
${\bf v},{\bf w}\in V$ を基底とするように取れます。

このとき、$V$ の3つのベクトルを ${\bf a}, {\bf b}, {\bf c}$ をとります。
すると、
${\bf a}=a_{11}{\bf v}+a_{12}{\bf w}$
${\bf b}=a_{21}{\bf v}+a_{22}{\bf w}$
${\bf c}=a_{31}{\bf v}+a_{32}{\bf w}$

となるような係数 $a_{11},\cdots, a_{32}$ があります。
よって、
$({\bf a}, {\bf b}, {\bf c})=({\bf v}, {\bf w})\begin{pmatrix}a_{11}&a_{21}&a_{31}\\a_{12}&a_{22}&a_{32}\end{pmatrix}$

もし、${\bf a},{\bf b},{\bf c}$ が一次独立であるなら、
$\begin{pmatrix}a_{11}\\a_{12}\end{pmatrix},\begin{pmatrix}a_{21}\\a_{22}\end{pmatrix},\begin{pmatrix}a_{31}\\a_{32}\end{pmatrix}$
も一次独立である。つまり $\begin{pmatrix}a_{11}&a_{21}&a_{31}\\a_{12}&a_{22}&a_{32}\end{pmatrix}$ のランクが3である。しかし、行列はランクは一般に行数や列数以下。
よって、ランクは2以下にならなければならない。
これは矛盾する。

よって、${\bf a},{\bf b},{\bf c}$ は一次従属。

(4) ベクトル空間の足し算 $V+W$ は以下のようにして定義されます。
$$V+W=\{{\bf v}+{\bf w}|{\bf v}\in V,{\bf w}\in W\}$$
です。この定義を説明すると、$V,W$ のベクトルのそれぞれの和としてかけるベクトル全体
ということです。

(6) $A$ を $n$ 次正方行列とし、${\bf v}\in  {\mathbb C}^n$ とする。このとき、連立方程式 $A{\bf v}=0$ に自明でない解が あることと、$\det(A)=0$ であることは同値であることを示せ。

対偶をとれば、
$A{\bf v}=0$ に自明でない解がないこと $\Leftrightarrow A$ が正則(逆行列がある)であること。
なる同値関係を示せばよいわけですが、
$\Leftarrow $は逆行列をかければよい。

$\Rightarrow $ の証明。逆行列が存在しないとすると、$A$ の $n$ 個の縦ベクトルは
一次従属ということであるから、${\bf v}=(a_1,a_2,\cdots, a_n)\neq (0,0,\cdots, 0)$ となる
ベクトルが存在して、$A{\bf v}=0$ が成り立ちます。

Miniature 1
Miniature 1はフィボナッチ数列 $\{F_n\}$ を計算を手早く計算しようという
内容です。

$$\begin{pmatrix}F_{n+2}\\F_{n+1}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&1\\1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}F_{n+1}\\F_{n}\end{pmatrix}=M\begin{pmatrix}F_{n+1}\\F_{n}\end{pmatrix}$$
を用いて、$M$ を書けることで、次々にフィボナッチ数を計算することができるように
なります。つまり、足し算によって計算していたフィボナッチ数列は、行列の
掛け算を計算すればよいということになります。$F_{2^k}$ の計算は、
$M^{2^k}=M^2\cdots M^2\cdots M^2$ のように $k$ 回の計算で
できるようになります。
同じように、一般の $n$ (For $n$ arbitrary) に対して
$$n=2^{k_1}+2^{k_2}+\cdots+2^{k_t}$$
のように書き表せます(2進法)ので、
同じように大体 $F_n$ を計算する回数は、$2\log n$ 回くらいに減らせるという
ことが分かります。

発表者は、よく説明ができていました。
もっと黒板を多く使って分かりやすく説明するとよいと思います。
binary は2進法(バイナリ)でした。

Miniature 2
次の話は、$F_n$ を計算するのに線形代数を使うということです。
そのとき、一度大きな空間を考えるます。
${\mathbb R}^\infty=\{(a_n)|n\in {\mathbb N},a_n\in {\mathbb R})\}$
です。これは、 全ての数列からなる空間で、無限次元べk取る空間です。
この中から、フィボナッチ数列からなる有限次元ベクトル空間を選び出します。

$$V=\{(a_n)\in {\mathbb R}^n|a_{n+2}=a_{n+1}+a_n\}$$
です。このとき、$V$は 2次元ベクトル空間となります。

本には2次元になるとさらりと書いてありますが、証明をすることは
できるでしょうか?基底を2つ選んでこればよいわけですが、
これも線形代数でできますね。

来週はこの続きからやります。

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