2015年10月22日木曜日

線形代数II演習(第3回)

[場所1E103(水曜日4限)]

HPに行く.

今日はベクトル空間に入りました.やったことは、

  • ベクトル空間であることの示し方.
  • 部分ベクトル空間であることの示し方.
  • 基底であることの示し方.
です.
そして、最後の方にベクトル空間を扱う上で重要なことを述べました.
また、後期になってから、とたんにわからなくなったという人が結構いることがわかりました.抽象的な問題が多いことと、証明問題が多くなったことでしょうか.


ベクトル空間であること

ベクトル空間であることや部分ベクトル空間であることの示し方は
別のページ(←のリンク)にも書いています.再びここでも書きます.

ベクトル空間であることを示す方法をあげておくと、
ベクトル空間の定義に戻って、教科書の8個の条件を示すこと、
もしくは、
ベクトル空間であることが既に分かっている空間の部分ベクトル空間であることを示すこと.

です.
2次以下の多項式全体の集合 ${\mathbb C}[x]_2$ がベクトル空間であることを示すとします.
やることは、${\mathbb C}[x]_2$ のベクトルの和の定義とスカラー倍の定義だけを用いて
VS1 から VS8 までの式が成り立つか示すのです.

$f,g,h\in {\mathbb C}[x]_2$ とし、$\alpha,\beta,\gamma\in {\mathbb C}$ とします.
$f=a_0+a_1x+a_2x^2, g=b_0+b_1x+b_2x^2, h=c_0+c_1x+c_2x^2$
とします.

使って良いのは、
$f+g=a_0+a_1x+a_2x^2+b_0+b_1x+b_2x^2=(a_0+b_0)+(a_1+b_1)x+(a_2+b_2)x^2$

$\alpha\cdot f=(\alpha a_0)+(\alpha a_1)x+(\alpha a_2)x^2$
の変形のみです.
もちろんイコールですから、逆の変形も許されています.

VS1 $(f+g)+h=f+(g+h)$ であることを示します.
$\begin{eqnarray*}(f+g)+h&=&((a_0+b_0)+(a_1+b_1)x+(a_2+b_2)x^2)+c_0+c_1x+c_2x^2\\&=&((a_0+b_0)+c_0)+((a_1+b_1)+c_1))x+((a_2+b_2)+c_2)x^2\\&=&(a_0+(b_0+c_0))+(a_1+(b_1+c_1))x+(a_2+(b_2+c_2))x^2\\&=&(a_0+a_1x+a_2x^2)+((b_0+c_0)+(b_1+c_1)x+(b_2+c_2)x^2)\\&=&a_0+a_1x+a_2x^2+(b_0+b_1x+b_2x^2+c_0+c_1x+c_2x^2)\\&=&f+(g+h)\end{eqnarray*}$

のようになります.ここでは、上の和の演算とスカラー倍の演算しか使っていないことに注意して下さい.さらに、VS2, VS3, VS4,  ... も同じように示してください.それがレポート問題です.レポートを解く際には、同じようにとサボることは許されませんので注意して下さい.

部分ベクトル空間であること

また、部分ベクトル空間であるということを示す方法でも、ある集合がベクトル空間であることを示す方法もあります.問題 C-3-1はあるベクトル空間の部分ベクトル空間になっているということも注目すべきことです.まず、大きい方の空間がベクトル空間であることを示してから、小さい方の空間が部分ベクトル空間であることを示せばよいことになります.

C-3-1の場合は、3次以下の多項式全体がベクトル空間であることを示す必要があります.それは示してください.

その前提のもとで、部分ベクトル空間であるということを示すのは簡単です.
2つしか条件がありません.

$W\subset V$ がスカラー ${\mathbb K}$ のもと、$V$ の部分ベクトル空間であることは

任意の ${\bf v}_1,{\bf v}_2\in W$ に対して、${\bf v}_1+{\bf v}_2\in W$ .
任意の ${\bf v}\in W$ と$\alpha\in {\mathbb K}$ に対して、$\alpha{\bf v}\in W$.

を示せばよいです.


基底であること

幾つかのベクトル ${\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n$ が $V$ の基底であるとは、以下の条件を満たすものです.

  • ${\bf v}_1,\cdots, {\bf v}_n$ が一次独立であること.
  • 任意の ${\bf v}\in V$ に対して、${\bf v}=c_1{\bf v}_1+\cdots +c_n{\bf v}_n$ となる $c_i\in {\mathbb K}$ が存在すること.
一次独立性も、同じように、
$c_1{\bf v}_1+\cdots+c_n{\bf v}_n=0$ ならば、全ての $i$ に対して $c_i=0$ が成り立つ.

です.先週数ベクトル空間の場合に教えたものと条件は同じですね.



ここで質問が出たところをもう一度書いておきます.
数ベクトル空間においての命題です.

定理
数ベクトル空間 ${\mathbb C}^n$ において数ベクトル(縦ベクトルとする)を
${\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n$ とする.
このとき、${\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n$  が基底になっていることと、
$A=({\bf a}_1\cdots {\bf a}_n)$ が正則であることとは同値.
この $A$ は、縦ベクトルを並べてできる正方行列のことです.
前期の復習を兼ねて、この定理について考えていきます.
この定理は結構重要です.


基底であることの1つ目を一次独立性、
2つ目のを一次結合性と呼ぶことにします.

(一次独立性)
$c_1{\bf a}_1+\cdots+c_n{\bf a}_2=({\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n)\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\\vdots\\c_n\end{pmatrix}={\bf 0}$

とすると、一次独立性とは、

$A{\bf x}=0$ となる方程式の解が ${\bf x}={\bf 0}$  のみであるかどうかということです.
それは$A$ が正則であることが必要十分です.(*)


ここで、$A$ は ${\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n$ を並べた行列とします.

(*)で書いたことを証明してみます.
もし、$A$ が正則であるとすると、その逆行列をかけることで、$A{\bf x}=0$ の解は
${\bf x}=0$ のみです.

逆に、$A{\bf x}=0$ の解が  ${\bf x}=0$ のみであるとする.
ここで、$A$ が正則でないとすると、$A$ を基本変形で簡約化して、$B$ となる行列が
得られたとします.行列が正則でないので、行列のランクが $n$ より小さくなります.
なので、$B$ の第 $n$ 行目は全て $0$ であることに注目して下さい.


つまり、$B=({\bf b}_1\cdots{\bf b}_n)$ の 第 $n$ 列目 ${\bf b}_n$ は 先頭列ではないことになります.先頭列の定義は教科書をみよ.

先頭列ではないベクトルは先頭列のベクトルの一次結合でかけますから、
${\bf b}_n=c_1{\bf b}_1+\cdots+c_{n-1}{\bf b}_{n-1}$
となります.
つまり、$B\begin{pmatrix}c_1\\\vdots\\c_{n-1}\\-1\end{pmatrix}=0$
となります.この式は、同じベクトルを用いて、
$A\begin{pmatrix}c_1\\\vdots\\c_{n-1}\\-1\end{pmatrix}=0$
となります.つまり、$A{\bf x}=0$ ならば ${\bf x}=0$ となるという仮定が成り立たないですので、矛盾です.
よって、$A$ は正則ということになります.


基本変形や簡約化をしてもベクトルの条件は変わらない.つまり、
$$A{\bf x}=0\Leftrightarrow B{\bf x}=0$$
が成り立つ.ということは先週の発表で誰か証明していましたね.
証明は当たり前だけど、重要なことだと強調しました.

つまり、基本変形や簡約化は方程式の同値変形です.

(一次結合性)
次に一次結合性についていきます.$A$ を正方行列とします.

任意の ${\bf v}\in {\mathbb C}^n$ に対して、ある ${\bf x}\in {\mathbb C}^n$ が存在して、
$${\bf v}=A{\bf x}$$
であることは、$A$ が正則であることと同値である.

を証明します.
もし $A$ が正則であるとすると、$A$ の逆行列を使って、${\bf x}=A^{-1}{\bf v}$ となるので、解となる ${\bf x}$ がつくれます.

逆に、任意の ${\bf v}$ に対して、${\bf v}=A{\bf x}$ となるベクトル ${\bf x}$ が存在したとします.
$A$ が正則でないとします.そうすると、$A$ を簡約化して、$B$ という行列が得られたとします.
そうすると、任意の ${\bf v}$ に対して、$B{\bf x}=PA{\bf x}=P{\bf v}={\bf w}$ となる ${\bf x}$
が存在することになります.しかし、$B$ は正則ではない階段行列ですので、やはり、第 $n$ 行は全て $0$ です.
今、${\bf w}$ の第 $n$ 成分 $w_n$ が $0$ でないものを選びます.そうすると、${\bf v}=P^{-1}{\bf w}$ を ${\bf v}$ として、${\bf v}=A{\bf x}$ となる方程式を解こうとすると、$B{\bf x}={\bf w}$ を解くことと同じになって、この第 $n$ 成分目の式は、$0=w_n\neq 0$ となり、仮定に反します.

よって、$A$ が正則でないとすると、任意の ${\bf v}$ に対して、$A{\bf x}={\bf v}$ に解が存在しいことになります.

よって、 $A$ は正則でないといけないということになるのです.



以上より、数ベクトル空間 ${\mathbb C}^n$ の場合に、ある $n$ 個のベクトルが基底となることは、その$n$ 個のベクトルを並べてできる行列が正則であることと同値になるのです.
$n$ 個のベクトルを取ると、一次独立性と一次結合性は同じ条件になることも分かりました.


なので、数ベクトル空間 ${\bf C}^n$ の中の $n$ 個のベクトルが基底であるかどうかは、それから作られる行列の正則性を言えばよいことになります.つまり行列式が非ゼロということですね.

問題C-3-2 について
書かれた3つのベクトル ${\bf v}_1,\cdots {\bf v}_3$ が基底であることを確かめてください.

$c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2+c_3{\bf v}_3=0$ という式は、ある行列 $A$ が出てきて、$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=0$ となりますね(←実際この$A$を計算で導いて下さい.)

また、
$c_1{\bf v}_1+c_2{\bf v}_2+c_3{\bf v}_3={\bf x}$ という式は、同じ行列を用いて、
$A\begin{pmatrix}c_1\\c_2\\c_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}b_0\\b_1\\b_2\end{pmatrix}$ となります.(←同じ $A$ になることを計算で導いて下さい.)
ここで、$b_0,b_1,b_2$ は、${\bf x}=b_0+b_1x+b_2x^2$ となるはずです.示して下さい.

そうすると、${\bf v}_1,{\bf v}_2,{\bf v}_3$ が基底であるかどうかは、行列 $A$ の
縦ベクトル ${\bf a}_1,{\bf a}_2,{\bf a}_3$ が基底であるかどうかということになります.
(←これもちゃんと説明して下さい.上に書かれた定理を使っても構いません)

従って、それは、上で書いたことから、$A$ が正則であることと同値です.

以上がC-3-2の解き方の説明です.

レポートでは証明は省略せずに、上のことを全て説明する気になって書いて下さい.

0 件のコメント:

コメントを投稿