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2016年2月1日月曜日

微積分II演習(第14回)後半

[場所1E103(金曜日5限)]

つづきです.
前半はこちら(←リンク)です.

べき級数、収束半径

べき級数とは、
\sum_{n=0}^\infty a_nz^n
なる級数のことで、a_n に対してべき関数 z^n が各項についています.
z=1 とすることで、級数 \sum_{n=0}^\infty a_n も得られます.
また、これはある関数 f(z) のテイラー展開とみなすこともできます.
例えば、a_n=\frac{1}{n!} とすれば、この級数は e^z と一致します.

z^n の部分を他のものに変えたものも存在します.例えば z^n の代わりに n^{-z} としたものはディリクレ級数といい、数論の世界よく使います.(それに関してはこちらをみよ.))


話を元に戻します、

ここで、重要な概念として、収束半径というものがあります.
\sum_{n=1}^\infty a_nz^n の収束半径が R とは、|z|<R となる任意の z に対して、
この級数 \sum_{n=1}^\infty a_nz^n が絶対収束するような最大の R のことを言います.

例えば、\sum_{n=0}^{\infty}z^n は、|z|<1 となる任意の z において、
\sum_{n=1}^{\infty }|z|^n=\frac{1}{1-|z|} が成り立ち、右辺は有界ですので、そのような z において、\sum_{n=1}^{\infty }z^n は絶対収束します.

1 が最大であることを言うには、丁度 |z|=1 のときに、発散することを言えばよく、
実際、 z=1 を入れてみれば、
\sum_{n=1}^\infty 1=\infty となり、確かに収束しません.

よって、べき級数 \sum_{n=0}^\infty z^n は収束半径が 1 をもつということになります.

また、収束半径については、以下のような公式が知られています.

定理[コーシー・アダマール]
\sum_{n=1}^\infty a_nz^n の収束半径 R は、
\frac{1}{R}=\limsup_{n\to \infty }\sqrt[n]{|a_n|}
です.ここで、\limsup の意味は、数列が収束しなくても、その収束値のうち最大(上限)をとればよいということです.
実際、\sqrt[n]{|a_n|} が収束するなら、その収束値そのものが 1/R となります.

また、次のような定理が知られています.

定理
a_n\neq 0 のとき、\lim_{n\to \infty}|\frac{a_{n+1}}{a_n}| が収束するなら、1/R=\lim_{n\to \infty}|\frac{a_{n+1}}{a_n}| となる.

この定理を用いれば、例えば、\sum_{n=0}^\infty z^n は、すぐに収束半径が 1 となります.
また、\sum_{n=0}^\infty \frac{z^n}{n!} とすると、\lim_{n\to \infty }\frac{1}{n}=0 となるので、収束半径は \infty ということになります.


提出14-2について、f(z)=1/(1-z)z=a での展開をすると、
f^{(n)}(z)=\frac{n!}{(1-z)^{n+1}} となりますので、
f^{(n)}(a)=\frac{n!}{(1-a)^{n+1}} となります.

よって、f(z)=\sum_{n=0}^\infty \frac{(z-a)^n}{(1-a)^{n+1}} と展開される.

ここで、収束半径は、\sqrt[n]{|\frac{1}{(1-a)^{n+1}}|}=\frac{1}{|1-a|^{\frac{n+1}{n}}}\to \frac{1}{|1-a|} となります.

よって、コーシーアダマールの定理により、収束がいえたので、
|1-a| が収束半径となります.つまり、半径の中心と 1 までの距離ということになります.

よって、f(z)=\frac{1}{1-z} の関数のうち、無限大に発散するのは、z=1 のみであり、べき級数を展開する点 a からその 1 までの間なら、級数展開をしてやれば、必ずその間で収束するということが分かることになるのです.

つまり、展開する点から収束半径丁度のところには、このべき級数が関数として発散する点が必ずあることになるのです.

だから、収束半径が \infty\sum_{n=0}^\infty \frac{z^n}{n!} などは、発散する点が無限大となり、有限の値では関数が発散しないことになります.


宿題-14-2(2) についても上のダランベールの方法を使うことで、収束半径が分かると思います.

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